配偶者居住権(民法1028条)を利用して税金対策するのは、簡単な話ではないと思ったこと。その1(2021.7.9)

−長命化する社会での生存配偶者の保護と利害調整−


 今回と次回は私がまだ実務では直面していない話をさせて頂きます。唯の私の感想です。
 今はネットのお陰で、立法の過程の情報を自宅で見ることができます。平成26年から相続法制検討ワーキングチームによる検討会が始まり、法制審議会の部会が繰返し行われ、その資料は公開されています。先の民法改正のひとつとして配偶者居住権は創設されたとのことです。これを読むと何の目的で配偶者居住権があるのかが分かるはずです。私は法律的に理解する頭はありませんが、部分的に読んでみました。


 平成30年6月8日に行われた政府の法務委員会においては、小野瀬政府参考人(この方は元々裁判官です。)国会議員の委員から質問されて次のように回答されています。「この配偶者居住権は、配偶者が相続開始後も従前の居住環境での生活を継続することを可能とするために、その選択肢となる手段をふやすことを目的として創設したものでございます。」
 配偶者居住権というのは、一定の要件を満たした場合に配偶者が建物を無償で使って住める権利とのことで、建物の所有権とは別です。


 旦那様がお亡くなりになって、ご夫婦で一緒に住んで来た家に普通、どなたが住まわれるでしょうか。大抵、残された奥様が住み続けます。ふた親が住んで来た自宅について、所有者が亡くなった親であれば、残った親がそっくり引き継ぐことが一番多いと思います。配偶者居住権とその敷地を利用する権利だけを奥様が貰い、所有権は子供などの親ではない人が貰うという遺産の分け方は、何らかの事情がなければ特殊な分け方だと感じます。

 実子だったら、遺産分割の際に「お母さんには居住権を取って貰い、私は所有権を取ります。」とは普通言わないでしょう。そうなると、配偶者居住権は分割協議のときよりも分割調停や遺言などのときに登場することが多いのではないかと思いました。

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