譲渡・相続

(1)事前対策の大切さ
 不動産の売買や相続においては、事後的に税金対策をしても手遅れの場合が多いです。事前に、どういう選択肢があるのかを知っておく必要があります。
 資産の運用は、10年後あるいは20年後のご自分のこと、経済情勢、ご家族の将来のこと等、多面的要素により判断されるものです。また、資産税で、大幅に納税額を減らすことができる特例の要件は厳密ですので、どちらかの専門家に事前に相談されるべきと思います。
 今、相続税の課税方法が、法定相続分課税方式から遺産取得課税方式へ大きく変わろうとしています。遺言書の見直しまでされる資産家の方が出てくるだろうと思われます。


(2)譲渡所得の申告
 既に本年、土地家屋を売られた個人様は、譲渡所得が発生して来年3月に確定申告義務が生じている可能性があります。法務局から税務署へ通知が行くことなどの理由で、隠そうとしても分かってしまいます。特例を使える場合には上手に選択適用すると、節税が図れることがあります。


(3)贈与・相続税の申告
 相続時精算課税がすっかり定着した感があります。税の負担としてはデメリットがあったとしても、生前贈与を受けた推定相続人の安心感は計り知れないものがあります。
 資産負債の多寡によりますが、相続税申告はかなりの作業量を要しますので、申告期限間際に会計事務所に駆け込むことがないようにご注意下さい。

相続があった場合のタイムスケジュール

税務申告を中心とした、一番シンプルな場合の実務上の流れをご説明致します。

(1)相続発生直後
 @死亡届の提出

 A葬儀

 B初七日・四十九日法要

(2)3か月以内

 相続の放棄又は限定承認
  普通はありませんが、相続の放棄又は限定承認がある場合には、家庭裁判所に書類を提出します。

(3)4か月以内

 被相続人の所得税・消費税の税務申告
  「準確定申告」と呼ばれるものです。申告期限は、翌年の3月ではなく、4か月以内となっています。
  この時までに遺産分割協議が出来ていなくて、遺言書もない場合には、法定相続人が法定相続分を貰ったものとして申告します。
  準確定申告書の作成と提出は当方が致します。

(4)10か月以内

 @被相続人の財産と債務の調査及び確定
  戸籍謄本や残高証明など各種の書類を集めて頂きます。何が必要か逐一ご説明してリストをお渡しします。
  不動産の謄本や図面は分かりにくいので、弊事務所の場合は、当方が法務局まで行って取得しています。

 A相続財産の評価
  相続税申告の際は、財産評価基本通達などの税務申告用に定められた評価方法を主に使います。

 B遺産分割協議
  故人の財産・債務をどの様に分けるかを決めます。相続権を持った方全員の同意が必要となります。

 C遺産分割協議書の作成と完成
  分割協議書は、法定相続人全ての署名と実印の押印をお願いします。
  税務申告・相続登記にはこれの添付が必要になります。
  未分割の場合にも申告書は提出しますが、全て終了するまで長期化することがあります。税理士の叔父によると最長15年かかったそうです。

 D相続税申告書の作成

 E相続税申告書への押印と税務署への申告書提出
  相続税の申告期限は10か月以内です。納税も原則はこの期限までになります。
  これも当方が行いますが、押印は相続人の方にして頂きます。 

(5)不動産の登記申請
  遺産分割協議に基づいた相続登記をします。
  司法書士への手数料の他に、登記に際して登録免許税がかかります。

「税理士のための相続・成年後見と家事事件手続の実務」(2013年4月 清文社 刊)

成年後見20130320 司法書士の先生方と共著で、書籍が出版されました。(←サムネイルをクリックすると画像が拡大します。)

 本の内容は家庭裁判所が関係することばかりです。
 家庭内・家族の間で発生する問題を処理する裁判所が家庭裁判所ですが、その手続きの法律が家事事件手続法です。

 ところで、このサイトの文章は全て一般の方向けに記事を書いていますが、この書籍は主な読者対象が少々異なります。
 一般の方がいきなり読まれると少し難解かもしれませんが、実用書なので役に立つところも充分あります。昨日、所得税確定申告書の控えを受取りに事務所にみえたお客様に本の話しをしてお見せしたら、ぜひ欲しいとおっしゃるので、早速一冊差し上げました。

 出版元である清文社さんは、税に関する専門書を出版している名門の出版社です。税務署の方々や税理士には馴染みの深い会社です。

 さて、相続税や贈与税の申告を行おうとする場合には、
実は税の規定を知っているだけでは充分ではないようです。
 前提となっている法律・手続きを知らないでいると、大きな落とし穴にはまる可能性があります。そういうことが起きないように、家事事件手続法を民法に絡めて解説されています。

 ごく分かり易いひとつの例として、ご親族の方が亡くなって遺言書が残されていたとします。
 遺言書と書かれた封筒には糊で封がしてありました。
 自分は遺産をどの位貰えるのか早く知りたいと思うのが人情です。
 でも、もう死んだから良いだろうと自己判断して、勝手に開封してはダメですよね?

 「遺言書(公正証書による遺言を除く。)の保管者又はこれを発見した相続人は,遺言者の死亡を知った後,遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して,
その「検認」を請求しなければなりません。
また,封印のある遺言書は,家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。」(文章引用元は裁判所サイト)
 これは遺言書の検認と呼ばれています。こういうことは税理士試験では不要な知識ですが、仕事をしているうちに次々と知っておくべきことが出てきます。