-税務ではみなし役員に支払う給与も役員給与と同じ扱い-
本日、地元法人会にて、新設法人説明会の講師をして来ました。90分の時間を使って、初めて会社を設立された方が、税務に関して必ず知っておかねばならないアウトラインを一通り全部ご説明しました。消費税や源泉所得税については、所轄税務署の方が手際良く解説されました。 持ち時間が90分のため、概要とポイント中心になります。その他、税法の規定は分かりにくいところがありますので、その例を一つご紹介しました。今回はみなし役員について、お話しをしてみました。
登記上の役員は、どなたでも役員と思っていらっしゃいます。 でも、登記上は役員ではないけれども、実質役員と同じ方は、みなし役員として登記上の役員と同様の法人税法上の規定の適用を受けます。みなし役員に該当するかどうかは、法人税関係諸法令に当てはめて判定します。
法人税に、同族会社の使用人のうち、一定の要件を満たす者で、その法人の経営に従事しているものは、みなし役員となる旨の規定があります。
例として、社長の持ち株率が100%で、役員は社長一人だけだったとします。社長の奥様は、持ち株は無しで、取締役でも監査役でもありませんが、社長と一緒に働くので給与を貰いますという場合についてについて、考えてみました。
先ず、その会社は同族会社に該当します。社長奥様は使用人に該当します。中小企業では、陰に日向に社長を支える奥様は、社長にとって一番の経営パートナーであり、会社の意思決定に参与していれば経営に従事していることと同じになります。
残りの「一定の要件」を満たしていると、その規定に当てはまるので、みなし役員となります。
その残りの要件なのですが、50%超基準、10%超基準、5%超基準の全部を満たすと一定の要件を満たすことになります。引っ掛かり易いのが、5%超基準です。その使用人の持ち株割合が5%超であると、5%超基準を満たしたことになります。奥様は持ち株ゼロなので、5%超ではないから、セーフと思いきや、規定にはかっこ書きで、配偶者の持ち分を合算してという意味のことが書いてあります。社長が100%持っていますから、この5%超基準も満たしていることになります。
結果として、奥様は、取締役の肩書はありませんが、税務上では役員になります。
これがどう影響するかと言うと、奥様を普通の従業員と同じつもりで、賞与を支給したり、利益調整のために給与金額を操作したりしますと、役員給与の損金不算入部分が出て来る可能性があります。税務調査で発覚した場合には、否認分の所得が増加し、元々課税所得金額がある場合には、追徴税額及び利息を払うことになります。いわゆる、税務調査でやられた〜っていうことですね。
新設ホヤホヤ法人の社長さん達には、この話は相当理解し難かったと思いますが、法人税法っていうのはこういう規定もあるので、思わぬところでエッ?ってなることがあるということは、何となく感じて頂いたはずです。