配偶者居住権(民法1028条)を利用して税金対策するのは、簡単な話ではないと思ったこと。その2(2021.7.9)

−節税目的の配偶者居住権の設定は易しくない計算シミュレーションと詳しい同意書の保存が必要になるでしょう−

 配偶者の死亡(や期間満了や建物の滅失)により配偶者居住権は消滅すると民法で定めているところから、その消滅したものには国税は課税を行わないと決めたところに着目して、この民法1028条の規定を使って相続税の負担を減らすスキームが専門家により考えられています。ただ、親族の状況は年々変わって行くことを分かっていないといけないと思います。

 例えば、予定通りそのまま自宅が終の棲家になれば良いですが、そうならないかもしれません。介護の都合から、高齢者が終の棲家を自宅から有料老人ホームに変更する場合ってあると思います。その場合、相続人である配偶者が無償で子供に家を引き渡して居住権は放棄すると子供に告げたら、配偶者居住権等に対して、原則として、贈与税が課されることが相続税基本通達に載っています。課税の対象は家屋だけでなく、敷地利用権即ち土地も対象になってくるので、金額的に大きなものになります。土地に係る金額について、相続税の通達に何て書いてあるかと言うと「当該土地を当該配偶者居住権に基づき使用する権利の価額に相当する利益に相当する金額」となっていて、その税務上の具体的な計算方法は国税庁により発表されています。有料老人ホームに入居することが、仮に配偶者居住権の合意解除又は放棄には該当しないということであれば、贈与になりませんが、主張しても通用しない恐れがあります。では贈与税がかかるなら贈与は止めて、子供からお金を貰うことに変えたら、今度は配偶者に譲渡所得がかかります。ちなみに総合課税の譲渡所得だそうです。総合課税は累進税率です。

 旦那様がお亡くなりになって10年20年経って奥様はご存命のことはざらにあります。配偶者や子供は配偶者居住権設定時のことを覚えていられるのかという心配が出て来ます。

 配偶者居住権を設定しようがしまいが、家屋と土地の評価額の合計額は変わりませんが、配偶者が亡くなると配偶者居住権とその敷地利用権の評価額の分は節税になります。なお、設定するということはイコール一次相続時に子供が相続した分があることを意味し、それがゆえに一次相続と二次相続合計すると税額が少なくなっている計算になっているかもしれないことを考えてみるべきです。一次相続で配偶者が全部取得すると、そのときは税金がかからないが、二次相続の税額が大きくなるので、最初から配偶者と子供とで分けたほうが相続税が少なくなるというパターンです。子供が相続するのは配偶者居住権付き所有権ではなく、預金であっても同じことです。

 物件が被相続人と共有、一部賃貸、土地は借地とでもなると、私なら税額の算定だけでも大変です。更に、大分先になるかもしれない二次相続までの計算と各規定の適用関係を説明されて理解納得できるかと考えると、配偶者居住権を税負担の減少目的で使うのは難易度高めの節税計画ではないかと思います。

配偶者居住権(民法1028条)を利用して税金対策するのは、簡単な話ではないと思ったこと。その1(2021.7.9)

−長命化する社会での生存配偶者の保護と利害調整−


 今回と次回は私がまだ実務では直面していない話をさせて頂きます。唯の私の感想です。
 今はネットのお陰で、立法の過程の情報を自宅で見ることができます。平成26年から相続法制検討ワーキングチームによる検討会が始まり、法制審議会の部会が繰返し行われ、その資料は公開されています。先の民法改正のひとつとして配偶者居住権は創設されたとのことです。これを読むと何の目的で配偶者居住権があるのかが分かるはずです。私は法律的に理解する頭はありませんが、部分的に読んでみました。


 平成30年6月8日に行われた政府の法務委員会においては、小野瀬政府参考人(この方は元々裁判官です。)国会議員の委員から質問されて次のように回答されています。「この配偶者居住権は、配偶者が相続開始後も従前の居住環境での生活を継続することを可能とするために、その選択肢となる手段をふやすことを目的として創設したものでございます。」
 配偶者居住権というのは、一定の要件を満たした場合に配偶者が建物を無償で使って住める権利とのことで、建物の所有権とは別です。


 旦那様がお亡くなりになって、ご夫婦で一緒に住んで来た家に普通、どなたが住まわれるでしょうか。大抵、残された奥様が住み続けます。ふた親が住んで来た自宅について、所有者が亡くなった親であれば、残った親がそっくり引き継ぐことが一番多いと思います。配偶者居住権とその敷地を利用する権利だけを奥様が貰い、所有権は子供などの親ではない人が貰うという遺産の分け方は、何らかの事情がなければ特殊な分け方だと感じます。

 実子だったら、遺産分割の際に「お母さんには居住権を取って貰い、私は所有権を取ります。」とは普通言わないでしょう。そうなると、配偶者居住権は分割協議のときよりも分割調停や遺言などのときに登場することが多いのではないかと思いました。

法定相続情報証明制度と相続税申告 (2020.11.26)

−相続税申告では戸籍謄本を提出するのが原則−

  平成29年から始まった「法定相続情報証明制度」で作成した法定相続情報一覧図は
各種相続手続きに利用することができますので、これは画期的なものです。
ただ、相続手続きと一言で言っても、全ての手続きが同じではありませんから、その「法定相続情報」があれば、相続税の申告をする上で戸籍謄本はなくても大丈夫かというと、そうとは限りません。

 第一に養子がいるかどうか、「法定相続情報」を見てそれが分かる知識がないと、
相続税の計算で困ることになります。ただ、それはよく調べれば解決できるでしょう。

 問題なのは、数次相続が発生している場合です。
一次相続が発生し、「法定相続情報」作成後にその法定相続人がお亡くなりになるという例がありました。
そして私は最初から一次相続の法定相続情報のコピーを入手できました。
司法書士の先生に、新たに亡くなっている方がいるので新しいものをその後作成されたのですかとお聞きしたら、
法定相続情報は一次相続情報しか記載しないと教えて頂きました。

 それで「法定相続情報」はあったものの、結局、戸籍謄本は全部取らなければならないし、
住民票も全部入手しないと処理を進められないことが分かりました。
 ついでに言うと、相続関係図の最初のところからやって行かないと出生死亡の経緯や関係が分かりませんので、結局やったことは法定相続情報証明制度ができる前と同じでした。

 課税庁によりますと、添付書類としては戸籍謄本を提出するのが原則とのことです。ただ、添付するのはコピーで良くなりましたので、その点は数次相続のときはもう一回全部取り直す必要がありませんから手間が省けます。

「原田治 展 「かわいい」の発見」2019年7月13日(土)〜9月23日(日・祝)(2019.7.10)

―どなたでも知っているカルビーのポテトチップスでお馴染みのキャラクタもー


 東京の世田谷文学館で開催されます。

取得費が不明な不動産の譲渡所得 (2018.12.12)

−購入価額が証明できなければ、取得費は原則として譲渡価額の5%でやるしかありません。

 

  私はこの仕事をしている以上、税務行政に混乱を招くようなことを書いたらいけません。みんなが好き勝手なことを言い出したら、申告が滅茶苦茶になります。
不動産の譲渡所得の申告をする場合、購入時の売買契約書等が無いのならば
取得費は譲渡価額の5%相当額とするしかないですというのが私の立場です。

 と言いながら、購入時の契約書がないものの、概算取得費(譲渡価額の5%相当額を取得費とする。)を使わない例がいくつも出てきました。
先ず、何で契約書がないかと言うと、書類が多過ぎて古い書類は要らないと思って捨てたとか、認知症になりかかっていたとか、悪意の第三者が証拠隠滅を図るために破棄したらしいとか色々事情があります。
 取得時に特殊関係者ではない者から購入しているのであれば、時価と極端にかけ離れていない金額で買っているはずです。
その当時のおおよその時価までは分からないことはないのですが、時価が推定できたとしても、その金額で買ったことにはなりません。

  購入時の契約書が無ければその代わりになる何か決め手になるものを提示するとか、誰もが納得する合理的な説明がつくとかすれば、概算取得費を使わないことが可能になりうると思います。

 譲渡損となっていることは間違いないらしく、これで課税されたらたまんないだろうという例がありました。
 昔購入したということは、同時に売った側もいる訳ですので、売った側の情報へのアプローチから問題解決を図りました。
しかし、推定や推定計算による申告はリスクが高いです。

 大事なことは、不動産を買った時の書類はずっと捨てたらダメということですね。買う時は売る時のことを考えていませんが、いつ売ることになるか分かりません。

亡くなった後、直ぐに相続税申告を終わらせるのは無理なこと。(2017.12.31)

ー相続税申告は資料が全部集まるまでに時間がかかりますー


 相続財産に土地がある場合には、その年の路線価が発表(現在は7月に発表です。)されないことには土地評価額が確定できません。
これは割と知られていることだと思います。
他にも死亡後、時間が経ってから申告のために必要な数値が分かるものがあります。
それが分からないと最終的な数値は算定できません。でも、適当にか、おおざっぱにやって早く済ませたい場合は話しは別ですね。

 具体例として、ある方が今年2月下旬にお亡くなりになりました。
故人の個人市民税の納税通知書が相続人のお手元に届いたのは7月31日でした。
所得税の準確定申告の処理が終わってからでないと、市役所は市税の計算ができません。
この分は債務として計算で使うので到着を待つことになります。

  また被相続人の事業税の納税通知書は一体いつ届くのだろうと待っていたところ、10月に入ってから届きました。これも相続税の申告で使います。

 相続税ソフトウェアのバージョンアップ時期は9月〜10月なので、ソフトを使用するならば、申告書の最終完成はソフトウェアが出た後になります。

 相続税の申告期限は所得税等の他の税目と比べて10ヶ月後と長めになっていますが、それは一般的な申告の話しです。裁判所の手続きの関係で、相続税の申告期限が亡くなった日から約3年後になったこともありました。

 お付き合いのある顧問先様がお亡くなりになった場合、こちらの気持ちとして、継続してご本人のために仕事をしているような気持ちです。亡くなったという実感が沸かないためだと思います。

税務署の表敬訪問を受けたこと (2017.11.11)

−偽税理士行為を課税側は非常に嫌がります−

 8月も終盤に入った頃、来所予約をされていた税務署職員の方がおみえになりました。
名目は表敬訪問とアンケート、意見聴取ということです。
 最初、私はとうとううちも手入れが入ることになったか、内心どうしようと犯人意識みたいなものが芽生えたのですが、
何も隠すものはないので、そのうち何処からでも何でもどうぞという気持ちになりました。

 40分位その方と色々なお話しをさせて頂いたのですが、その中でひとつ、偽税理士行為に対して税務署は必ず厳しく対処するという話しが出ました。

 以前、私もこういう経験をしています。
 ある会計事務所の所長がお亡くなりになりました。
 そこの職員が以前の担当先の税務申告書を自分で作成してそのまま提出していたそうです。
その職員は税理士免許を持っていないため、社長が自分が作ったことにして申告していました。
これは偽税理士行為と言われるもののひとつです。

 これが発覚し、2名の税務署職員が家の中を調べに来たそうです。
もし又やったら、逮捕して牢屋に入れると言われたそうです。
税務行政をきちんと行うために我々は税理士さんを守らなければならないと言われたそうです。
 「そうです」書いていますが、これは私がその職員さんからの伝聞のためです。
ちょっとした経緯があり、私がその数社の法人の決算申告を受任することになり、
その後は何も起きませんでした。

 話しが元に戻ります。当事務所にみえたその税務署の方から、
無資格の人が税理士業務をやっているのを見かけたら税務署に連絡してくださいと言われました。
厳しく処罰の対象にするとのことです。それを聞いて、私は国の組織に対して頼もしく感じました。
課税側が税理士を守るのは、資格者が依頼者のために職責を果たすことを期待しているからです。

金融機関のICキャッシュカード 指静脈認証登録のコツ(2016.12.14)

ー登録したものの肝心な時に認証されずに使えなかったら困りますー

 銀行キャッシュカードで一日引き出せる現金は今50万円までです。
 とある金融機関では生体認証カードを作ると300万円まで引き出せるようになるそうなので、私も登録してきました。
 今日の話は自分の失敗談なのですが、皆さんが同じ轍を踏まないようにという目的で書いています。手続きに1時間かかってしまいました。それほど時間かかるとは予想していませんでした。先ず、中々登録できずに機械にエラーを出されました。その後、やっと登録できたのでその支店のATMで試験したところエラーになり認証されませんでした。

 失敗を繰り返していた原因はやり方がまずかったためです。
 指の中の静脈データで認証する方式は、指紋は関係ないので指を読み取り機に押し付けるようにしたらダメです。元々非接触装置です。
 指を自然な感じで真っ直ぐにして定位置に置けば、それで登録されるし、認証時はほんの1秒で認証されます。
 爪先を光っているところに合わせて、掌は下の台に置きます。
左の指と右の指と両方登録するので、当然、右でも左でもどちらを使っても認証されます。
 後でネットで生体認証の理屈と正しいやり方を調べてみて、最初にやっていたやり方だと上手く行かない訳だと分かりました。

 ネットに下記のような記述がありました。
「指を機器に強く押し付けてしまうことによって血流が阻害されて、エラーの原因になるという例が多くあります。
うまく行かないとかえって強く押し付けてしまいがちですが、機器に軽く触れる程度に指を載せるのがもっとも確実です。」
 生体認証装置は種類が沢山あって、それぞれ特徴があるので、それを知ってから利用したほうが良いですね。

 それから、つい数日前のニュースによると、銀行の生体認証カードで被害者に多額の現金を引き出させて騙し取る手口が多くなってきたそうです。 やはり、特に必要がない場合には、多額の現金を引き出せるようにしておくのは止めたほうが吉だと思いました。

 それと、高額な現金を引き出す目的ではなく、落とした場合や盗まれた場合に備えて生体認証をつけるのならば、暗証番号だけでは現金を引き出せないように設定して貰う必要があります。そういう使い方もあります。

「オサムグッズの原田治 展」2016年7月1日(金)〜9月25日(日)(2016.5.26)

−1980〜90年代にかけて女子中高生に大人気だったキャラクター−

 懐かしのオサムグッズ コレクション展示や復刻グッズの販売が東京で行われます。

読売新聞朝刊に掲載されました。(2015.11.9)

−読売新聞経済部の取材を受けました−

 平成27年10月27日読売新聞3面、社説の右側に「インボイス脱税防止に効果」と大見出しがついた長い記事が載っています。その隣の2面に実務家による解説コメントとして私が答えた内容を基にした記事が掲載されました。

(↓サムネイルをクリックすると画像が拡大します。)


 現行の消費税法の規定にインボイス方式や複数税率を単純に上乗せした場合、事業者の負担が増加します。その負担分は売上原価を構成しますので、結局、最終担税者である消費者がそのコストを負担することになると言えるでしょう。

 事業者側の日々の経理作業として、課税事業者から仕入れたのかどうか、領収書の税区分と税額をすべて見て仕訳しなければならなくなったら、大変です。

規模にそぐわない均等割課税に救済策ができたこと(2015.10.31)

−平成27年地方税改正の適用を受けての無償減資−

 約1年前に当事務所ブログに「減資で地方税均等割負担を減らせるのか」
という記事を掲載致しました。せっかくですので、続きを書かせて頂きます。
当時は無償減資しただけでは、均等割を減らすための策として何も意味を成さないという状態でした。

 嘗ては売上が多く、増資をして資本金を増やしたけれども、現在は売上がめっきり落ち込んで細々と商売をしているという会社が世の中には沢山あるはずです。
 資本金の額のみで課税標準を決めて取引規模は考慮しないというのは如何なものでしょう。
 資本金の額が過大になっている法人の場合には、税額の多寡は受益者負担という観点で測ると考えた場合には合理的ではありません。

 平成27年4月1日以後に開始する事業年度においては、
無償減資を行い、その他資本剰余金に計上してから1年以内に損失の補てんに充てた金額は、資本金の額からマイナスした金額をもって均等割の判定を行うという手当がされました。
 つまり、無償減資をして均等割を減らせることが可能です。以前大赤字を出して規模縮小した会社なら繰越利益剰余金も多額の損失になっていることでしょう。

 なお、この改正は外形標準課税と足並みを揃えるためだそうです。

 但し、改正により課税標準にマイナスされるだけでなくプラスされることもあり、良いことばかりではありませんので詳しいことは、顧問税理士さんと相談検討して頂くとして、減資の効力が発生しないと減資したことにならないことに留意すべきだと思います。

 前のブログに書いたように、仕訳しただけでは減資したことにならないです。債権者に催告書を送るという作業と異議の申し出が出るかどうかを予め考えておかないとならないでしょう。

 また東京都への税務申告では、減資したことを証明する書類として、会社自身が作成する総会議事録や株主資本等変動計算書の他に、公告をした官報のコピーなど3点を申告の際に添付書類として提出するよう求められます。
 東京都の場合第6号様式別表5の2の3の裏面に記載の手引きが書いてあり、
添付書類について私が先日電話で都税に直接お尋ねしました。減資登記が完了した後の謄本を出さないとダメとは言われませんでした。
 でも、減資したならばその証拠の謄本を添付して課税庁に届出を行うことになりますので登記がされていない減資は怪しいと疑われるでしょう。

 18万円だった均等割の負担が最小の7万円減ることは、零細な事業者にとっては結構大きいと思いました。

減資で地方税均等割負担を減らせるのか(2014.9.11)

−中小零細会社にとってはハードルが高い場合が多いでしょう−

(注意)その後法令の改正がありました。

 過去には事業規模が大きく、資本金を10,000,000円超にした会社があります。
その後、事業縮小し零細な会社になったとします。
 今までみたいに高い均等割を払う余裕はないので、減資して資本金等の額を
減らそうと誰でも考えます。
そうなった場合、財務内容が良くてお金が余っている会社は有償減資をすれば良いです。

 しかし、バランスシートは大債務超過状態で、かろうじてお金を回しているような会社では、
現実的には無理ですね。
 減資をするためには、株主総会で減資の特別決議を行い、官報に公告、各債務者に催告を行い、それらの書類を減資のための登記申請の添付書類にします。
登記申請が通らなければ、謄本に載っている資本金は前のままです。
 剰余金配当の総会決議を行い配当をしようにも、会社法で財源規制がありますので、
これにひっかかるのではないかと思いました。
そもそも会社法に定める分配可能額がゼロですから分配の余地がないと思われます。
とすると、有償減資できないことになります。

 デット・エクティ・スワップ(DES)が上記減資とセットで書いてある記事をネットで見かけますが、減資とDESは直接関係ありません。DESは、債務の株式化と言われるように、例えば借入債務を現金の代わりの出資として、資本金を増やす取引です。増資です。なぜセットで書かれているかと言うと、上記減資をしても払い戻すお金がないので、この未払金処理している負債を消すために出てきただけです。

 債務超過会社がDESによって増加する資本金を時価評価し、未払金との差額を債務消滅益としたとして、その後有償減資できるようになるほど、巨額の債務消滅益を計上した場合(それができたとして)、それを消すための繰越欠損金はちゃんとあるのか、期限切れ欠損金の損金算入ができるのかという問題が出てきます。

 自社に会社更生法の開始手続き決定等があった場合には、又法人税法に特別な規定があるようです。いずれのせよ、利益剰余金がマイナスになり過ぎてから、減資したいと希望しても大変だと思います。

 会社法に関係なく株配当を自由に決めても構わないのであれば、何も色々考えないで
 (資本金) (未払金) 
として、今未払いだがいつかは配当するつもりだから有償減資と言い張れば良くて、無償も有償も関係なくなり変な話です。

社長貸付金(2013.8.3)

−社長への臨時的な給与−

 先日、立川税務署で開かれた決算法人説明会の講師を務めさせていただきました。
 その中でどうしても話しておきたいことがあったのですが、時間不足で喋り切れず心残りなので
ここで話しておきたいと思います。

 個人で事業をしている時には、稼いだお金はどう使おうが自分の自由と言えるでしょう

 しかし、法人を新設された方には、社長が自分個人のために使うお金を会社から取る場合、
①会社から給与で貰うか、
②社長が株主であるならば配当で貰うか
の2つと考えておいたほうが良いですよ
と申し上げています。
 会社のお金は会社のお金、個人のお金は個人のお金。全く別人の財布と考えるのが原則です。

 「俺の会社の金はどう使おうが勝手だ、好きなだけ銀行から引き出して自由に使えるんだ。」と考えていると、あとで色々なツケが回ってきます。

 社会的影響度合いよっては、特別は特別背任罪や横領罪で実刑を受けかねません。

 税という面から、ひとつの例を挙げてみたいと思います。
 社長が私用のために会社のお金を使った場合です。
私用のために引き出したお金は、帳簿上、短期貸付金勘定や仮払金勘定などに計上してあると思います。
それが会社に戻されずそのままになっている場合はどうでしょう。

 社長給与として払われた分は、個人において所得に対して課税がされます。

 これに対して短期貸付金になっている分は、個人において給与として処理されていません。
別にそれで構わないのであれば、社長に給与は殆ど支払わないで、
残りは貸し付けたことにしておけば良いとは思われませんか?
所得税・住民税・健康保険税・厚生年金の負担がいっぺんに無くなります。

 貸し付けたおいたことされていても、まともな返済がされていないし、利息も受け取っていないとなると、傍から見たら、臨時的な給与を支給したのと同じです。

 給与認定された場合、それがそっくり法人の課税所得にプラスされて、利息やら罰金やら
付いてくるのでたまりません。個人に対しても課税が来ます。
「そんな一度にまとめて払える訳ないでしょ。」となってしまいます。

−ネット上で良く見かける紹介業者さんに初めて会いました−

 私がこういうサイトを公開しているので、1、2週間に一回は、ホームページ関係の業者や顧問先紹介業者から営業の電話がかかって来ます。多い時は一日に数回かかって来ます。

 顧問先紹介業者とは何かと言うと、税理士事務所にお客さんを紹介する対価として税理士事務所から紹介料金を貰う業者です。税理士をお探しの一般の方から見れば、税理士紹介業者です。

 弊事務所では、そういう紹介業者と契約したことがありませんので、紹介業者経由のお客様はいらっしゃいません。どういう方が利用されているのか全然分かりません。

 先日、面白い電話がかかって来ました。ある企業の方が、うちのお客さんが税理士を探していて、たまたまインターネットで私(山本)のことを知ったそうです。それで、そのお客さんに紹介しても大丈夫かどうか私に会ってみたいということでした。何か別のことも話しをされていましたが、そちらは今一つ要領を得ませんでした。その税理士を探しているという会社についての情報は割とはっきり伝えて来ました。
 それで、事務所に来て頂いたのですが、要するに、高額な事務機器の抱き合わせ販売をする顧問先紹介業者でした。せっかく遠くからみえたのに、直ぐ帰って頂いたら悪いので、話しは全部お聞きしました。噂に聞いていた紹介業の一端が分かりました。
 こういうスキームがありますよと勧められたのですが、私にはピンときませんでした。それがもし会計事務所ビジネスとして上手く行くチャンスがあるならば、おそらくこういうことでしょう。

 先ず、お客様から会計事務所へ支払う仮定報酬額は低かったです。あの金額クラスの仕事を自分から引き受けたがる会計事務所は少ないでしょう。私が過去に勤めた事務所では、そんなに安い報酬のお客さんは殆ど見たことなかったですね。会計事務所側は、毎月紹介会社への手数料を払わなければなりません。会計事務所としては同じ仕事をしても、通常より儲けが少なくなります。
 そうであれば、月給のうんと安い職員を採って、彼らの担当件数つまり受託顧問先数を増やせば良いですよね。そうすれば、薄利多売で採算を合わせることは可能になるのではと思います。
 その他に考えられることとして、当初取り決めた報酬の他、後日、各種名目の加算報酬を上乗せして行くことです。また、安く頼んで来る仕事は、どこかで作業を省力化しないとなりませんが、手抜きにも限度があります。その辺、上手な采配が出来る所長なら大丈夫なのでしょう。などと、どうも良くない方向に考えてしまいます。

 でも、そういう業者が現に存在して、実際に活動しているのであれば、それは世の中に必要だから存在し続けることが可能なのではないでしょうか。一概にダメとは言い切れないでしょう。 税理士業界関係紙で税理士が顧問先紹介業者を告訴した記事を読んだことがあります。規制もないし、チェックも受けない民間組織であれば、良心的な会社だけでなく、とんでもない会社があるのは当然のことです。良心的な会社があるかどうかは知りませんが。

 ついでながら、弊事務所は今後も紹介会社とは契約致しません。

−直ぐに結果は分かりません− 

 去年、相続税申告のため、相続財産土地の現地調査をしてきました。見ないとイメージが湧かないので、現場を見て画像を撮って来ます。
 その対象土地の路線価図を見ると、敷地の接道道路に路線価が附されていませんでした。私道だったからです。
 そこで、税務署に特定路線価を附して貰うための申請をすることにしました。
 申請のための書類を作成する都合上、市役所に行きました。都市計画課で用途地域等の制限状況を教えて貰い、下水道課で下水道の埋設図コピーを貰って来ました。その後、今度は別の役所へ行って水道管の配管図をコピーして貰いました。ガス管については、ファックスで問い合わせが出来たので、足を運ばずに済みました。大体分かって、証拠資料も揃ったので、申出書を出して来ました。
 その後、所轄税務署から評価部門は武蔵府中税務署に統合されたから、そちらに資料を回送したということと、現地のこういう画像も欲しいと言う連絡が来ました。言われた通りの画像を追加で撮影して別途郵送しました。
 申出から丁度1ヶ月で通知書が届きましたが、必ずその位の日数で返事が来るとは限りません。相当余裕をもって出さないといけないですね。


 別の相続税申告でも少し似たような感じのものがあったので、なるべく早くはっきりさせないといけないと思いました。そう言えば、法務局は正月明け4日からやっていますが、この日に行くと流石にガラガラなのでお勧めです。今年も4日に行ってみるかなと思っています。国分寺市内の土地ですと、管轄は府中支局です。

− 迷ったら家賃を貰うべき日の属する年の収入として申告−

 個人が所有している不動産を人に貸している場合、家賃などの収入が入ります。所得税の申告では、これを不動産所得の収入金額として計算します。
 さて、では一体何月〜何月の分までを本年の収入金額とすれば良いのでしょうか。自分が継続して関与していない方の不動産収入を始めて見た場合、いつも悩みます。
 多いパターンが、入金ベースで計算する方法です。また、いつ払って貰っているかに関係なく、何月分ということで計算する方法も多く見受けられます。この何月分という概念も、その人なりの定義があるので、1月分が1/1〜1/31分とは限らず、早とちりしないようにしないとなりません。
 所得税法では、
①契約等に定められている支払日に計上。
②貸付期間の経過に応じて計上。但し、継続記帳と前受未収の経理を行っていること。
③一定の小規模事業者が、現金主義の届け出をした場合に限り、現金主義。
この3つのどれかになるのですが、自己申告の計算を見てみると、正確にこれらのどれかに該当する処理がされていることは少ないですね。

 ただ、入金ベースで不動産収入を計上している人は、家賃滞納者が一人もなければ、結果として①と一致することが多いです。  というのは、普通の賃貸借契約は、当月分(例えば1/1〜1/31に対応する家賃)は、前月末日(12/31)までに払うような契約になっています。12月中に1月分が入金されるので、現金主義で12月の収入金額として計上してあると、①と同じ結果になります。しかし、何日か遅れて払って来る賃借人がいると、その分は計上もれになっています。でも、翌年の申告で収入に計上してくれるのなら、課税当局としては、しょうがないというところなのでしょうか。

−税金が溜まってしまった会社がお金を貸して貰えない理由―

 会社が払うべき税金を滞納して払っていない状態では、普通の金融機関から融資を受けることは難しいようです。審査のための資料の一つとして、納税証明書の提出を求められます。  なぜ、滞納していないことが条件になっているのでしょう。

 私は以前、決まりを守らない人は、返済の約束も守らない人、ルーズで信用出来ないので貸さないと思っていました。  ところが、私はこの仕事に就いてみて、信用できないから貸せない等という倫理的感情的な理由ではなく、物理的に返済不能だから貸せないというように見方が変わりました。

 会社が納めるべき税金のうち、国が課する税金の代表として、法人税、消費税、源泉所得税などがあります。


 消費税。預かった税金から、自分が払った税金との差額を納めるだけです。だから、払えない訳がないで、もし、滞納している時は預り金を使ってしまっていることになります。源泉所得税も同じで、社員さんなどから預かっている個人所得税のお金を会社が社員さんの代わりに支払代行しているだけです。預り金の流用までしている状態では、返済の見込みは低いのではないですか。
 そして法人税。利益の出た場合にのみ発生します。だから、払えない訳がないという理屈が考えられます。ただ、これの滞納の裏側には、実際はマイナスであるのにプラスであるように偽装がされていますと、損益はプラスなので法人税は発生するけれども、払う力は無いので、結局、滞納ということになってしまいます。

 

 それと、お金はあるのに、納期限から遅れて税金を納付してしまったため、金融機関からダメ出しを貰った例があり、期日はしっかり守る必要があるでしょう。私だって、クライアント様と取り交わした約束を破って、申告期限後に書類を持って行き、少し遅れてしまいましたと言ったらどうでしょう。私がお客さんの立場なら、やっぱり二度と仕事を頼まないでしょう。

−交際費が損金不算入になる道理−

 (注意)その後法令の改正がありました。

 交際費課税を例にして、税法の原理のひとつを考えてみました。

 法人税では、会社の払う交際費が原則として損金不算入となっています。費用として計上しても、法人税の計算では費用扱いしてくれません。 但し、中小企業の場合には、600万円以内の部分は90%が損金にすることが認められています。やっぱり、10%に対しては課税されます。どうして、費用が税金の計算をする上で損金にならないのでしょう。

 

 税理士試験の受験では、答案に趣旨は冗長な費用の支出を抑制するための規定と書きます。 でも、実務に就いてみて、実例を見ているうちに、交際費を使っている会社は無駄な出費をするので、経営が悪くなるとはどうも思えなくなりました。

 人への気配りが出来たり、積極的に人と付き合ったりすると、信頼関係が深くなり、又、人付き合いの幅も広がるのではないでしょうか。会社は、先ず栄えるようにすることが先決です。誰かから、交際費使うと余計に税金がかかるから減らすように言われてその通り実行したところ、取引先からあそこはケチと思われてしまったらどうでしょう。。

 良く考えてみると、会計処理としては、貰っている側はこれを収益に計上していません。物で貰うと金額が分からないし、個人宛で貰うと法人として計上しにくい性質のものです。支出側は費用、収入側は収益ゼロです。そのままだと、課税のバランスが取れていないので、交際費課税の条文が出来たのではないかと思いました。

 悪い人の例を出してみます。私のところの税理士報酬を毎月1万円にしたとします。それとは別に商品券の現物を何十万円か貰います。その商品券を持って金券ショップで換金してポケットに入れてしまいます。そうなるとどうでしょう。私のほうは、商品券分は収益計上しないので、その分に係る税金は安くなります。払っているほうの法人の費用は1万円プラス交際費に計上する商品券代です。貰っている私が税金を払わないので、払っているほうに負担してもらうしかありませんよね?

 そういう解釈をするならば、法人税の申告書で交際費の損金不算入額を所得に加算するのが道理です。相手の税金の分もプレゼントしたということになります。

 悪い人の例として、私の顧問料をとか書きましたが。私は、無論そういうことをしたことも無いし、するつもりもありませんので誤解のないように(笑)税理士でそういうことを要求してくるような人は滅多にいないでしょう。もしそういうやり方で何とか手数料を払うように言って来る人がいたら、付き合わないのが吉です。一事が万事というやつで、それ以外の事でも似たようなことを沢山やっていますから。

-EXCEL給与計算-

 給与計算やそれに関連する書類は、電卓を叩いて自分で計算し、用紙に手書きで書き込んで作るというのも一つの方法です。昔はそれが当たり前だったはずですが、今は便利なものがあります。

 うちは規模的には小さな会社だけど、源泉徴収票や源泉徴収簿位、印刷で出した奇麗なものにしたい、でも高いものは買えないという会社向けの給与ソフトをひとつご紹介させて頂きます。

 「Puzzle Rings(パズルリングス)」というサイトにおいて、会計や税務の資格を持っている方々がシンプルな給与計算ソフト「EXCEL給与計算」を提供されています。  そのサイトからダウンロードして3,150円を指定口座に振り込むと、パスワードが送られて来て、自社仕様にすることが出来ます。ベクターからも購入することが可能です。

 私もこれを使っています。その理由は、管理が簡単で、年末調整関係のものも全部作成出来るためです。本格給与ソフトと違い、シンプルなのであちこち見る必要がありません。
 月の給与は大体決まっていて、給与を支払う対象者が10人以内の会社なら、十分なのではないかという気がします。10人以上の会社でももちろん利用可能です。また、社会保険や労働保険の申告書を作成する機能はついていません。
 エクセル操作の基礎があること、ある程度のことは自分で調べて直接数値を入力することが可能な方にはお勧めです。

 市販されている給与計算ソフトは、調べてみると、それぞれ一長一短があるようです。  以前、会計事務所勤務時代に担当先の給与計算をやるように言われて、そこで使っているソフトでやってみたことがあります。至れり尽くせりの設計になっていたためか、ぱっと見て、一体どこをクリックすれば良いのか分からないし、どう連動されるのかが良く分かりませんでした。

 弊事務所では、中小事業者の会計帳簿のチェックや年末年始事務のために、各月の給与の集計まではしますが、基本的には給与計算そのものは致しておりません。給与や人事、労務に関することの専門家は社会保険労務士です。ただ、例外的に給与計算も承っているお客様もいます。

 使用ソフトは、エプソンの給与応援Superです。スタンドアローン版の値段は市場価格で、17万円近くします。更新が必要なので、年間38,000(税別)の保守料が必要です。  このソフトは会計事務所用と謳っていますが、なぜそうなのかと言うと、税に関する書類である法定調書や総括表まで全部がこれひとつで作成できるためだと思います。

  -自計化している小規模事業者-

 会計事務所業界では、自社で複式簿記の会計帳簿を作成している会社を「自計化」されている会社と言います。大きな会社は経理部があり、専門知識を持っている経理マンがいるので内部で出来ますが、会社規模が小さいと自社処理が出来ないことがあります。その中で、自計化が充分可能な会社様や既に自計化されている会社様の中で素晴らしいと思った例をお話ししたいと思います。

 割りと最近のことですが、年商数千間円の会社の記帳を急遽一年分することになりました。作成されている手書き伝票は素晴らしくて、こと数値に関してはパーフェクトでした。伝票の数値は、別に作成されている現金出納帳と各預金出納帳と完全に対応していました。作業途中、ソフトとこれらの出納帳と合っていなかった時は、私の入力ミスによるものでした。伝票の摘要欄もわざわざここまで詳しく記載するまでないのではと思うほどです。他の準備資料も十二分に揃っていて、最初からこのような状態で依頼されたのは、初めてと言って良い位です。
 こういう会社様は自計化に移行することは難しくありません。

 別の会社で、凄いと思った例としては、かなり高齢の社長様が手書きで伝票と帳簿を作成されていた例です。手で書いているものが合っている訳ないと思っていたところ、これがキチンと出来ていました。手計算の減価償却費も法人税の償却限度額と一致していました。手で全部やって自分にこれだけ出来るかと考えると怪しいです。

 また、これもある程度ご年配の方ですが、会計ソフトを導入してご自分で会計帳簿を作成するための初期指導をしました。この方は簿記の知識は有りません。唯、この方は知的な仕事をされている上にパソコンの操作は慣れていらっしゃいました。この方ならマスターできると思って、半ば私が無理やりやって頂いたような感じでした。やり直しをして頂いた入力が相当出たので、怒りながらされたのではないかと思います。短期間で身につけられました。

 社長の奥様で主婦業をなさっていた方が、立派に帳簿を付けられるようになられた例もあります。私は最初、こういう事務作業をお出来になるかどうか疑問だったのですが、綺麗な帳簿になりました。

 ここで出来るようになったと書いていますが、仕訳間違いが多く、勘定残高が実際残高と全然一致していないようなものは、帳簿が出来ているとは言えません。

 誰でも簡単に帳簿が出来るというキャッチフレーズで会計ソフトが市販されているのを見ますが、あれは本当でしょうか?  ダイエット商品のコピーには「好きなだけ食べて楽にダイエットに成功!」というようなものばかり見受けられますが、本当に?と疑ってしまいます。

 私が例として挙げたような方々は、相当頑張られたから、そこまで到達されたのだと思います。

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